たーこいずの宝箱

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大好きなものへの愛を綴るブログ

映画「四畳半タイムマシンブルース」感想

以前、この記事で森見登美彦氏著・四畳半神話体系についての感想などをつらつらと書いた私。

turquoise2134.hatenablog.com

この記事を書いたきっかけでもある、四畳半神話大系の続編・四畳半タイムマシンブルースのアニメが2022/9/30に劇場公開されましたので、見てまいりました~!

3週間限定、しかも公開される劇場は限られており、数量限定の入場者特典もあるということで、公開2日目にして私の行った劇場では、どの回も満員でした。

映画のネットの予約ページで初めて×の表示を見たかもしれません。

 

そして前々からこれを買いたいな~などとホームページを見てはグッズを買う気満々でいたのですが、2日目の朝一番の回で見たにもかかわらず、グッズがほぼ完売という...(タイムマシンバージョンのトートバックだけ2、3個残ってた)

そんなことあります?

満員なところまでは、「まあ劇場が限られてるしな~」「みんな入場特典欲しいよね」なんて納得してましたけれど、グッズが2日目の朝で売り切れるなんてちょっと計算ミスなのでは?四畳半の人気を舐めてもらっちゃ困りますわよ。

責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。

これで転売なんてされてたら恨む。

入場特典が無事ゲットできたことと、パンフレットは買えたことだけでも良かったです本当。後からTwitter見てたらパンフも結構売り切れてたみたいですし。

 

と、まあ映画外へのコメントはこのあたりにしておきまして、そろそろ映画の感想を。

では、以下ネタバレあり感想です。小説とパンフレットのネタバレを含みます。ご注意ください。

大きい物と小さい物を揃えるのは紳士淑女のたしなみなので。
入場特典の書き下ろしもポンコツぶりが炸裂していて良きでした。
文庫本にすっぽり収まるサイズなのも素晴らしきことかな。



 

まるで四畳半のために作られた設定

私、原案となっているサマータイムマシン・ブルースは見たことないので、どこまでが元々の設定で、どこからが森見登美彦さんの付け加えた設定なのかは、パンフレットや小説のあとがき等々からしか推し測ることしかできません。

Disney+で映画版は観れるみたいなので、また観てみたいな〜とは思っておりますが。

 

なんですけど樋口師匠がビダルサスーンを愛用しているなんて、下鴨幽水荘の99年前は沼だったなんて、下鴨幽水荘には穴掘り犬ケチャがいるなんて、何よりもコーラによって壊れたクーラーのリモコンを取り戻すためだけにタイムマシーンを使うことでわちゃわちゃするなんて、これほどまでに自然な設定ありますか?

 

各種情報を読んだところ、今例に挙げたもの達はサマータイムマシン・ブルースに元々あった設定のようなんです。

特に樋口師匠にこだわりのシャンプーがあるのなんてもう元々森見登美彦さんがそういうキャラ設定にしてたでしょ!と言いたくなるくらい。

それくらいに不自然さがなくて、流石森見登美彦ー!!!となりました。

 

そんな風に悪魔的融合を果たした訳ですから、面白くないわけがない。

一番最初の予告版の、「何故そんなすごいものが、よりによってこんなところに」っていうセリフが大好きなんですよ。

youtu.be

まさしくよりによってこんなところにですよ。

タイムマシンなんて存分に興味を引いて危険も伴うような機械が四畳半のみんなに与えられたら、面白くならないわけがない。

その点では、予告にあった「よりによってこんなところに」が本編で聞けなかったのはちょっぴり寂しかったです。

 

四畳半のみんながタイムマシンを有用に使えるわけなんてなくて、ただリモコンを昨日と今日で行ったり来たりさせるだけ

と思いきや99年前にリモコンを落としてくるというハプニング付き。

これを落としてきたのがしっかり者に見える城ヶ崎先輩ってのがいいんですよね。

 

1番最初のタイムトラベラーを小津に名指しするのが樋口師匠なのも、樋口師匠には任せておかないから城ヶ崎先輩がタイムマシンを横取りするのも、なんなら第一陣が小津、樋口師匠、羽貫さんという考えうる限り最悪の人選なのも、これほどまでにパズルのピースがぴたりとはまる設定ありますか。

完璧すぎる上田誠さんの設定と、それを四畳半の土場に落とし込んだ森見登美彦さんのなせる技です。

そしてそれを再度上田誠さんが脚本化するという、なんとももつれにもつれた黒い運命の糸。最高です。

 

今後も是非コラボって欲しいですよね。というか森見登美彦さんの作品は今後も全て上田誠さんに脚本をお願いしたいものです。

アニメ化するにあたって不必要な部分を削ぎ落としたらつまらない作品になってしまい、不必要な部分こそ森見作品の面白さであると気づいた上田誠さんが、いっそ削ぎ落とさず全部喋らせてしまおうとして誕生した「私」の早口ナレーション

四畳半神話体系以外もそうですが、原作の魅力を、森見登美彦さんの魅力を余すことなく映像にしていただけるのはとっても嬉しいです。

 

あんなところにも四畳半のネタが

四畳半神話体系の続編的位置づけですが、厳密には続きという訳ではありません。

なぜなら四畳半神話体系はパラレル物ですから、四畳半タイムマシンブルースも四畳半神話体系と同じく、パラレルワールドの1つにすぎないのです。

 

ですから、映画では触れられていませんでしたが、「私」は京福電鉄研究会という存在していない京都と福井を結ぶ電車を研究するサークルに所属していて小津と出会う、という四畳半神話体系とはまた違った世界にいる「私」なのです。

この、京福電鉄研究会のくだりもとっても阿呆らしくてポンコツっぷりが炸裂していて面白いので、小説を未読の方は是非読んでいただきたい。

予想どおり、京福電鉄研究会については映画では全カットでしたが、エンドロールで京福電鉄研究会の文字が流れてきた時は興奮してしまいました。

Disney +オリジナルの1話分でやってくれないかなぁなんて淡い期待をしております。

 

話を戻しますと、続編ではないのですが、四畳半神話体系でも描かれていたように、パラレルワールド内でもあちこちに共通点がある訳です。

 

例えば、映画サークルみそぎ

四畳半神話体系では、映画サークルみそぎで独裁政権をしていた城ヶ崎先輩に反旗を翻すべく上映した映画で追われる身となっていました。

そして四畳半タイムマシンブルースでも、映画サークルみそぎは存在し、その中でも城ヶ崎先輩は人望が厚く、中心的存在として偉そうに振る舞っておりました。

 

これは外せない、ふわふわ戦隊もちぐま

四畳半神話体系でも、四畳半タイムマシンブルースでも、もちぐまが「私」と明石さんが親睦を深めるきっかけになっておりました。

 

そしてアニメ版ならではの繋がりも。

なんと大家さんが「私」が迷える子羊ちゃんごっこをしていたあの占い師だったのです。

また会えて嬉しい限り。

家賃を払いに来た学生たちを紅茶でもてなす際に占いもしてくれるのかもしれません。

 

そして何より私が興奮したのは、城ヶ崎先輩のTシャツに書かれているロゴです。

なんとkaorisanと書かれていたのです!

映画鑑賞中、突如気づきまして、なんと興奮したことか。

香織さんとは、四畳半神話体系で城ヶ崎先輩が愛しているラブドール

四畳半タイムマシンブルースの世界でも城ヶ崎先輩は香織さんを愛でているのだなぁとほっこりしてしまいました。

四畳半タイムマシンブルースの「私」も、城ヶ崎先輩(と相島さん)を出来る限り陰湿な方法で足を引っ張ろうと決意した訳ですから、遅かれ早かれ香織さんの存在を知って、小津の誘拐作戦に乗りかけたりするのかなぁと妄想などしてしまったり。

 

もちろん、愛すべきキャラ達がそっくりそのままなのは言うまでもありません。

「私」はやっぱり今日がダメなら明日があると思っているし、出来ることなら一回生の春に戻ってやり直したいと思っています。

ここで四畳半神話体系のアニメの冒頭部分が流れたのは興奮しましたねぇ。

田村君に相島さんがアドバイスするシーン、まんま四畳半神話大系で最高でした。

 

そんな「私」を全力でダメにしようとする小津ももちろん健在。

タイムマシンで一回生の春に戻りたいと言う「私」の魂胆をやすやすと見抜き阻止しようとしたり、明石さんの後を追う「私」の後を追ったり、泥水をすするガマガエルのように江戸時代風のミネラル補給をしたりと、愛すべき小津を心の底から堪能できました。

麦茶の飲み方がめちゃくちゃ気持ち悪くて最高でしたし、「私」とのセクシャルな営みに見えちゃうたたき合いはもう神業とでも言うべきでしたね。

 

樋口師匠はどこにいっても樋口師匠のままですし(まさか25年後も下鴨幽水荘にいるとは...)、羽貫さんの自由奔放っぷりも、城ヶ崎先輩の胡散臭いまでの筋肉イケメンっぷり、相島先輩のうざったさももちろんそのまま。

 

しかし、明石さんはまた一段と可愛かったですねぇ!

四畳半神話体系よりも糖度が高めな今作、なぜかというとやはり明石さんと「私」のやりとりが多かったからでしょう。

「めちゃんこ暑いです」と言いながらラムネをぐいっと一飲みする明石さん、「仲良きことは阿呆らしきかな」と一言呟く明石さん、「プライバシーの侵害です」絶対零度で言い放つ明石さん、どれもこれももちろん明石さんのまま。かっこよくて可愛らしい明石さんです。

しかし、「私」と2人で五山の送り火を見に行こうと言われた時、みんなには内緒だと言われた時の「なるほどです」がめっちゃくちゃ甘かった。

もちろん言い方に甘さはないんですけど、「なるほどです」と噛み締める感じがもう甘くて甘くて。

この時の声優さんのタメ方も最高でしたね。

そうそう、キャラデザで明石さんや羽貫さんは、ボディーラインが見えないような服にしていただけたとのこと、とても嬉しい気持ちになりました。

 

ラスト、鴨川デルタでの明石さんと「私」のやりとりがとても素敵でした。うしろで好き勝手してるみんなも愛おしかった。

「成就した恋愛ほど語るに値しないものはない」というお決まりのセリフが、あの美しい下鴨デルタの情景とぴったりとはまっていました。

 

最後に

春を描いた四畳半神話体系の続編として、夏を描いた四畳半タイムマシンブルース。

こうなると秋、冬も見たくなっちゃいますね。

愛すべきポンコツ大学生達に出会えて、本当に良かった。

 

願わくばもう一度こんな大学生活を、とも思いますが、それこそ一度過ぎた夏はもう戻りません。

運命はもう決まっているのかもしれない。けれどそれを知らない私達にとっては未来は自由。

阿呆なやりとりの中に、大切なことが隠されている四畳半シリーズ、大好きです。

アニメ化だけでなく、劇場での公開、ありがとうございました!!

 

では、お読みくださりありがとうございました!