劇場版名探偵コナン第26作目「黒鉄の魚影」が2023/4/14より公開!
ということで毎年恒例、公開初日に観てまいりました。
黒ずくめが灰原の存在に気づいた!?というハラハラドキドキ展開ということは去年の映画で流れた特報で察しておりましたが、当方コナンと灰原の関係性を偏った味方・考え方で取り上げる広報に疲弊しておりますので、自衛のためそれ以降の予告やインタビュー等はできる限りシャットアウトして臨みました。
結果、今年の映画はいいところもあれば私的に好きではないところ・残念なところも同じくらい(は言い過ぎかもしれないけどそれなりに)あったなぁという印象です。
ということで、割と負の感想多めになってしまいます。それでも良いという方のみ読み進めてくださるようお願いします。
なお、今年はまだ1回しか観ていないので、例年以上にセリフは正確ではありません。あくまでニュアンスです。
また、鑑賞後、パンフレットやシネマガジン等インタビューが掲載されている雑誌もそれなりに目を通してますので、その辺りのネタバレも含まれています。
では、以下ネタバレあり感想です!
灰原哀の成長
もう、この映画はこの言葉に尽きると言っても過言ではないのでは?
組織に姉を殺されて自殺しようと思ったときから、組織から逃げてから、ずっと1人で全部を背負い込んで消えてしまおうと思っていた灰原。
そんな灰原が、「わたしを信じて」なんて言葉を発するなんて。あの灰原が!
子ども達や博士から影響を受けて、灰原も変わったんだなと、灰原がそんな言葉を発して人を救おうとするんだなと、ただただ感動しました。
そんな灰原が博士を大切に思っている描写も良かった。し、逆にみんなに想われている灰原の描写もよかった。
灰原が誘拐されて涙する博士がとても良かったし、体調を心配する探偵団も良かったし、拐われようとしていることを察して飛び出す蘭が素晴らしかった。
「優しいところあんじゃん」と灰原に声をかける園子も良かったし、「何か気になっちゃうんだよね」な蘭も良かった。
そんな蘭に対して灰原はお姉ちゃんを重ねてみてしまう描写があって本当に嬉しかった。あのハグのシーン最高だった。(そのハグシーンは脚本段階にはなくて監督さんが追加してくださったと聞いて震えた。そんなの絶対マストなのに。ハロ嫁しかり、やはり監督さんが素晴らしいのだな)
私は特報が出た時からずっと「二元ミステリー的に灰原を救う蘭が見たい」「蘭をお姉ちゃんと被せて見ちゃう灰原が見たい」とくどいくらいに言っていたので、もう本当に嬉しかったです。
と、灰原自身とその周りの描き方が良かったのに、良かったからこそ、人工呼吸後に浮上するシーンがどうしてもしんどかった。
元々私は新蘭の民なので、人工呼吸も辛いものがありましたけど、まああれはコナンは全く意識してないし仕方ないとして...いやもちろん14番目の標的や紺碧の棺の名シーンを冒涜するようなオマージュはやっぱり嫌ですけどね、嫌ですけども、海が舞台だし、灰原は自分が巻き込んでしまったコナンを救わなければならないという絶対的な意思があることを感じさせるために必要だったんだとなんとか思い込もうとすることはできるので...(だとしても何度も何度もやる必要はなかったことない?とは思う)
と、文句言いつつまだ人工呼吸は許せる。けれど、人工呼吸後に浮上するシーンが本当にしんどかった。
それまで、灰原の正体が組織にバレたかもしれない、灰原が捕まってしまった、もしかしたらコナンの正体もバレてしまうかもしれない、キールがNOCとバレてしまうかもしれない、組織から灰原を救い出せるのか、と手に汗握る展開が続いていて、緊張と興奮ですごかったのに、にもかかわらず、その浮上シーンでその興奮が一気に冷めちゃったんですよね。
え?私は何を見せられているの?これをどう受け止めろと??ってなってしまった。
そもそも海の中なので喋れるはずがない。ということはテレパシーで会話してるのか?それとも灰原の妄想??だってコナンが「ゆっくり行こうぜ」なんて言うか???ととにかくハテナだった。
手繋ぎアングルもくどいし、「私たちキスしちゃったんだよ?」もしんどかった。いや見ればわかるし、それ言う必要ある?って、そこまでの緊迫感が一気に削がれた。せっかく映画に没入していたのに、その世界の中に入り込んでいたのに、浮上シーンで「映画館で新作のコナン映画を見ている私」の意識に戻された。
ただ、まあ灰原は女子高生なんで、そりゃ人工呼吸でもキスしちゃった!!ってなるよなぁとは思った。そこは可愛い。
けど、これはフィクションなわけで、それをわざわざ入れてくることに悪意を感じる。
と思いながら見ていたんですけど、最後、「返したわよ」と蘭にキスするシーンでめっちゃ救われました。
だからこそ、その前のシーンで「待たせばかりね」が「工藤くん」ではなくて「新一くん」だったのかと。
だからこそ、わざわざ人工呼吸の後に「キスしちゃったんだよ」なんて言わせたのかと。
そして青山先生の残酷なまでの真っ直ぐさに流石だと思いました。もうこんなの先生にしか描けない。
灰原の覚悟が、決心が描かれたのだと。
(だとしても新一より前に蘭の唇奪ったのは少し悲しいけどね!)
助かった後、灰原の意識がないと錯覚して人工呼吸をしにやってきたコナンを制してまで、蘭にキスをした。この行動に、灰原の「コナンは新一にわたしが戻す、そして蘭の元へ返すんだ」という決意を感じた。
灰原が「新一くん」と呼んだのは、いつもいつも新一に待たされてばかりの蘭の気持ちに寄り添ったからであり、そんな蘭の気持ちを改めて実感したから。
そして、待たせてばかりの蘭に新一を返さなければいけない、それが新一をコナンにしてしまったわたしの役目だと。
感情は理屈ではないので、それを理解してもなお浮上シーンはあまり見たくないシーンですけど、でも、灰原の決意を描くためにわざと浮上シーンを強調したことは理解できました。
そう思うと、誰よりも圧倒的新蘭派な青山先生は、分裂派・コ哀派に引導を渡したのだなぁと、原作でやれないことだからこそ映画でやったんだなぁと。もうすごいとしか言えないです。
灰原が蘭にキスするシーンの青山原画の気合いの入りようすごかったですもんね。笑
灰原関連で言うと、結局メガネを渡した意味全くなかったですよね?
博士に何か追加機能をつけてもらったのかなぁとか思ってましたけど、ただ交換しただけかーい!しかも拐われてるからお守りの役目まで果たしてないやないかーい!っていうツッコミの嵐。ただあの原作の名シーンを入れたかったんですという自己満足ですかね?
あとこれは自分でも気にしすぎかな〜と思いますけど、冒頭の方、車の中で灰原がコナンにイヤホンの片方を貸すシーンの描き方も悪意を感じたよね...
「江戸川コナン、探偵さ」の名言を灰原に言わせるのもどうなのよ。そこはかっこいいシーンじゃん。もやっとしました。
あ、いいところを言うと、終盤、ニュースを見た後に映った3匹のイルカの置物が最高でしたね。
蘭のような人気者のイルカにはなれない、わたしは冷たく暗い海が似合うサメだと言っていた灰原も、イルカになることができた。
これを言葉で説明するんじゃなくて、ちょっとした描写で見せるのは映画らしさがあってとても良い演出でした。
しかも、1匹だけ向きが違ったのが意味深で、まるで芯から光属性な新一と蘭に対し、変わり始めた灰原という対比、もしくは恋心にケリをつけて身を引いた灰原という対比のように感じさせるのも素晴らしいなと。
MVP:キール
いやもう、私はMVPをキールに授けたい。
正直、1番苦労してるし1番辛い立場にいると思っていて。
自分のせいで父親を自殺に追い込んで、そんな父親の遺言でCIAとして潜入捜査を続けなくちゃいけなくて、見捨てるしかなかった命もいっぱいあって、弟の命も守りたくて、赤井秀一にはこき使われて(笑)、ジンやベルモットには疑われて、孤独で...
だからこそ、本堂瑛海の回想シーンが上手くリンクしたのには拍手を送りたい。素晴らしかった。
冒頭から本堂瑛海の葛藤が見えて、灰原が拐われた後からも上手く立ち回って脱出に力添えして、なんとあのジンに銃を突きつけられながらもなんとか助けた。もう勇気が、行動力が凄いよ...泣いちゃう。
本堂瑛海は本当に幸せになってほしい。きっと報われる日が来ると信じてます。
この流れで黒ずくめの話をすると、ジンが最初から最後までかっこよかったですねぇ。ヘリで潜水艦に降り立つVIP対応なジン、いいですねぇ。「クソシステムが!」はちょっとぽくなかったけども。
ピンガを既読無視して蹴落とすのも容赦なくて好き。
ピンガの小物感も良かった。本当に冷静で慎重派なRUMのお気に入りなのかは甚だ信じがたいが。ピンガの「またお前か!」ってそろって言われるコナンと蘭が良かった。まじで小物感満載。
けど、殺人犯であるピンガが殺されて終わりっていうのは、ちょっといただけないな〜殺人犯であっても殺させないことを信条としているのに、その辺がうやむやになって終わっちゃったのは少し残念。
生きて捉えた後、組織に奪還されて、喋った可能性があるから処刑、的な感じが良かったな。
そうそう、ピンガと言えば、交渉すればいい、って言っておいたにも関わらずノープランだったってことですか?コナン特に何もしてなかったよね...コナンの正体までバレてるって気づいてわざと怒らせたくらいじゃん。あれも行き当たりばったりだし。
あの辺うやむやになって、結局ベルモットのおかげで救われて、「あれ、あの後組織動いてこないな〜」なのはご都合主義すぎやしないか。
ウォッカのジンのアニキ大好き感も最高でしたね。キールにちゃんと説明するウォッカ、いい上司になるよ。
みんなに「予定外のことはすべきじゃない」と言われちゃうウォッカが可愛い。
そしてベルモットなんですけど、シェリーを救うためにシェリーに化けましたっていうオチは解釈違いなんだけども...殺したいほど憎い相手のはずなのに、フサエブランドを譲ってもらったからってシェリーを守ろうとするか?
それよりはシルバーブレットとエンジェルを守るためだし、自分とボスの秘密を守るためでしょうよ。
シェリー=灰原がバレたら新一=コナンもバレてしまうから助けた、組織の薬で若返ったことがバレたら自分の・ボスの秘密がバレてしまうから助けた、ってことなんじゃないの?
でも、このベルモットとボスの秘密についてちらっとでも描いてもらえるとは思ってなかったので嬉しい。やっぱり組織の目的は若返り・不老不死なのか...?今後の本編に期待。
7つの子のプッシュ音も興奮した。
蘭とコナン
いや〜素晴らしかったですね。
まずホエールウォッチングのライフジャケットを当たり前のように蘭に着せてもらうコナン、最高か?他の子自分で着てるよ?
もう子ども役が板について、役得してんの流石だわ。
そしてびっくりしたのがまさかの蘭とコナンが同室!?普通蘭と園子じゃないの!?もうびっくりしたよね。まあ蘭が灰原の誘拐に気づくためなんだろうけど、だとしても最高。
そして蘭の格闘シーン、美しかったなぁ。蘭の足技が好きなのでまじでかっこよかった。
危険を察知してまず身体が動くのがまさにおてんばレスキューだし、飛び出してきた蘭に「まじかよ!?」ってギョッとしてるコナンもまさにだった。素晴らしい。
組織との攻防に蘭を巻き込みたくないコナンと、そんなコナンの思惑から外れて自ら加わっていく蘭、まさに二元ミステリー。最高。
し、キャンティに狙われている時に蘭を助けて、蘭を助けるために必死になったコナンに新一を感じて、素直に言うことを聞く蘭が最高だった。そうなのよ、コナンが蘭に向けた心からの言葉とか咄嗟の行動、佇まいに新一を感じるのよ。
コナンや園子や子ども達を守るためには体を張って頑張る蘭だけど、新一には身を委ねる蘭がちゃんと描かれていた。
今作はハロ嫁でなかったから詰め込みましたとばかりに背後霊新一が豊富だったのは、いいシーンにとっておいてほしいよ勿体無いという気持ちもありつつ、素直に嬉しかったですね。笑
それと、自分で受け止めたかったな...なコナンが最高でしたね。
落ちる蘭を受け止めたかったけれど、子どもの姿じゃできなかった、こんな姿じゃな、というように上げたけど受け止められなかった自分の両腕を見つめるコナンの哀愁が良かった。
し、その後まさかの黒田管理官から蘭にアドバイスあったのがよかった。こういう些細なシーンが大切。
受け止めたのが黒田管理官だったからコナンも嫉妬せずに済んだね。笑
残念だったところ
とまあ長々と書いてきましたが、他にも残念なところはあって...
まず、おっちゃんの扱い雑すぎません!?
まじで酔っぱらわせとけばいい、寝かせとけばいいなのは辛いです。
だったらいっそ、高木刑事みたいに出演なしの方がマシ。もっとキャラを大事にしてほしいです。
確かにおっちゃんはお酒や女の人にだらしないところあるけど、でもめっちゃかっこいい人なので。
キャラが多くて捌ききれないんだとは思うんですけど、でもハロ嫁みたいに、少しのシーンでも満足感を得られるような、キャラを大切にした演出・脚本にしてほしいです。
どう考えても、子ども達の中で誰か1人が誘拐されたなんてなったらおっちゃんものすごいと思いますよ?身内に強いし情に熱いので。
活躍しないだけでなく、蘭にグーパンされても起きない、避難しなきゃいけないのに起きないのは酷すぎ。
それと、今年も全然ミステリーしてなかったですよね...コナンはあくまで「殺人ラブコメ」なので、そもそもミステリー要素を削らないで欲しい。
ミステリーかアクションかどっちか削るとかいう問題じゃないんですよ...
黒ずくめの映画でミステリー要素を求めるのは難しいのかもしれないですけど、犯人=ピンガなのは明白、そして犯人も明白すぎた。コーヒー飲むシーンからあからさまでしたもん。
そう思うとやっぱり漆黒の追跡者は素晴らしかったな...
佐藤さんがコナンの言うことを信じないくだりは、完全に脚本の都合だよな〜と思ってしまった。
あの佐藤さんですよ?コナンが意味もなく主張するわけないこと知ってるはず。
しかもその後に謝るシーンを入れるのもなんか違う気がする。コナンの必死さを伝えたかったんだろうけど、わざわざ追加しましたよ〜感が拭えなかったというか、脚本の都合で動かされている感がしてしまった。
そういう意味だと、今回の映画はキャラが勝手に動いている感じというよりは、脚本の都合でキャラが動かされている感があったな。
演出も、「こう見せたい!」という意図をすごく感じるというか。
コナンは泣かないのに、海の水滴で涙に見せたかったんだろうなとか、灰原が拐われてる必死なコナンを演出したかったんだろうなとか。
あんなになりふり構わなくなるのは蘭のことだけで、あとは彼割と冷静だと思いますよ...
あ、あとこれはまあ仕方ないのかな〜と思いますけど、結局コナン・赤井さん・安室さんで協力して解決!がさせたかったのね、という意図が読めてしまったのがちょっと残念。
「沈め」な赤井さんはくっそかっこよかったけれども。
でも、どうしても純黒の悪夢と被るんだよな〜いやまあ共闘するのはあついけどね。「ライ」「バーボン」呼びで組織とかやっていい役割とか超えてやれることをやる、っていうのもよかったですし。
コナンを通してだと協力し合えるってのも面白いですしね。
だとしても、もうひとひねり欲しかった感はあるかな〜
でも、バーボンよりもキールをメインに据えてくれてのは本当に嬉しい。感謝申し上げたいです。
最後に
とまあ個人的にはいいところも悪いところもあって、それを思うがままに綴ってしまいました。
見る人それぞれ思うところは違うと思いますので、こんな風に感じる人もいるんだなぁと温かい目で見てくださったら幸いです。
不満もいろいろ書きましたが、途中までの没入感・ハラハラ感は圧倒的で、しかも原作との絡みが素晴らしくて、比較的満足度高めな映画だったと思います。
でも私的にはハロウィンの花嫁が素晴らしかったので、余計にアラが目立ってしまった感じですかね。所々う〜んというところがあって、その引っかかるところが割と重たいというか。
劇場版コナンも30弾までは想定されているとのこと。原作も段々と核心に迫ってきていて、いよいよ映画も最後の回が近づいているのかもしれません。
私としては、コナンの最終回をきちんと見届けたいので、先生の思うような結末が迎えられること、その結末に立ち会えることを願っています。
まずは来年の映画!!!今年とは打って変わってわちゃわちゃ楽しそうな映画になりそうで、それもまた楽しみです。
では、お読みくださりありがとうございました!