2022/7/25発売の週刊少年ジャンプに前編が、2022/7/27発売の週刊少年サンデーに後編が掲載された、「名探偵コナン」の青山剛昌先生と「ONE PIECE」の尾田栄一郎先生の対談の感想です。
以前青山先生がインタビューで対談したら面白いかもとおっしゃっていたので、この対談が実現したと知ったときは衝撃だったと同時に、先生の夢が叶って嬉しい気持ちでした。
尾田先生も巻末コメントでコナンの100巻をお祝いしてくださっていたようで、そういったお二人の発言がきっかけなのかなと思うとなんだか胸がいっぱいになりますね。
サンデーに掲載されているコナン本編の感想は別記事です。
名探偵コナン(サンデー35号)FILE1097「引率者」感想 - たーこいずの宝箱
では、以下ネタバレあり感想です。なお、私はONE PIECEを全くと言っていいほど知らない人間ですので、青山先生に対しての感想多めです。
前編
尾田先生が一発屋だとおっしゃったことに対して「一発がデカすぎる」という反応が、青山先生が言うことに意義があるというか、よく言われることであっても言う人が違うとこんなに重みのある言葉に、新鮮味のある言葉になるんだなぁと思いました。
青山先生だから言えるというのは正直全体を通してそうなんですけど、あえて言うなら"ライバル視することはないか"という尾田先生からの問いに対して「ないねぇ」と答えちゃう凄さですよね。
金田一少年の事件簿みたいに同じ探偵なら負けるかよと思うけど、全然ジャンルが違うから思わない。
この感覚が流石青山先生だよなぁと。トップの座についてる先生だからこそ言えることですよね。
ここで面白いのは、尾田先生は名探偵コナンを敵視していたため全く読んでいなくて、引きずり降ろしてやると思っていたというのが、青山先生とまるで真逆な感覚なんですよね。
尾田先生はジャンプなので競争システムにもまれているからこその感じ方なのかもしれませんけど、やはりお人柄も大きいのかなと思います。
ONE PIECEはバトルもので、名探偵コナンは推理ものというところにも、こういう作者らしさが表れているのかなぁと思ったり。
尾田先生は他人は他人、自分は自分と思うようになったのはここ数年というのに対し、青山先生はわりと最初からその考え方だったとのこと、なんだかわかる気がするなぁと思いました。
青山先生って、ギラギラした感じがなくて、ほわんとした穏やかな空気をまとっている感じがするんですよね。売れるかどうか、というより自分が面白いかどうか、自分が好きかどうか、という考え方というか。
その話の流れで、数字に対する執着はあったという話の時に、「名探偵コナンは始まってからずっと1位だったんで...って言うといやらしいな、やめときます(笑)」ってのがもうめちゃめちゃ青山先生って感じで吹き出しました。最高です。
ここで尾田先生も共感してるのがすごいことなんですよね。本当にトップのお二人にしかできない会話をされていて、ぶっちゃけた話をしていただいていて。きっとこの対談自体をお二人自身が楽しんでいらっしゃるのだろうということが伝わってくるのがとても嬉しいですよね。
意外だったのは、入院のための長期休載のあと、人気が出なきゃまずいと思ったために狙って描いたというエピソード。
たしかに、赤井さんとバーボンがあんな構図で銃を構えあうなんて話題にしかなりませんが、コナンとしてはああいうエピソードの始まり方は珍しいなと思ってたんです。
だからこそレア感というか、とんでもない展開になるぞ!と思って興奮したので、まんまと青山先生の狙い通りです。青山先生は掌の上でころころするのが本当にお上手。
というか、こんなにもすでに人気があってもなお人気が出なきゃまずいと思うなんて、そんなに厳しい世界なんだなぁと思いました。
お互いの絵に対しての感想で、尾田先生は青山先生の絵に対して色気を感じている、という発言に驚くと同時に大共感しました。
青山先生の絵って、ただかっこいい、可愛いだけじゃない、なんだか人を惹きつける魅力がありますよね。これを「色気」と表す尾田先生の感性、大好きです。
一方青山先生は、ゴムゴムの実をルフィが食べるシーンがないことにびっくりした、とのこと。
先生なら食べさせて、「ドックン」をやるとおっしゃっていましたが、それはまさにAPTX4869を飲まされた工藤新一。こうやって同じ設定でも描き方、見せ方によって全然変わるのだなぁと今更ながら思いました。面白いですね。
そして共通点は声優さんの声を聴いてキャラを変更したという点。
マスコットキャラは好きではなかった尾田先生がチョッパーをマスコット化したのは、光彦が憎たらしくない可愛いキャラになったのは、大谷育江さんの声だったから。
光彦のエピソードは元々知っていましたが、チョッパーについては初めて知りました。確かに、大谷さんの声ってとても可愛らしくて愛らしいですもんね。
声によってキャラまで変えてしまうなんて、大谷さんって、声優さんってすごいなぁ。
そして、アニメ化されること前提で原作を描くという共通点もお二人ならではですよね。そんなお二人が同じ声優さんに影響されていたというのはとても面白かったです。
声優さんという点では、山寺さんを指名したのは青山先生だったというのに衝撃を受けました。確かに、あんなにも優秀な家族の大黒柱で、ずば抜けて優秀な父親である務武さんを演じられるのはレジェンドな山寺さんしかいないですもん。発表されたとき納得でしかありませんでしたから。
ナイスキャスティング!!!と思っていましたが、青山先生のご指名だったと聞いて流石先生だ...最高です...となりました。
後編
お二人がこんなにも長く連載を続けられているのは、ONE PIECE も名探偵コナンも自分の描きたいことが描けるから。
ONE PIECE では島ごとに、名探偵コナンでは事件ごとに取り上げたいトピックを描けるという話を聞いて、なるほどな〜と思いました。たしかに、ネタは尽きないですし飽きたら次の展開に進みやすいのかも。
だとしても、やっぱり次々と新たな展開を思いつくその発想力や、描きたいものが思い浮かぶ好奇心が素晴らしいですよね。
ラブコメのくだりでは、尾田先生はラブコメが苦手で、逆に青山先生はラブコメが得意という話が。
尾田先生は両想いになってしまうと2人のキャラクターのファンがいなくなってしまうのではと懸念されているようですが、この観点は青山先生にはないですよね~
「離れませんよ(即答)(笑)」との回答なのが流石ですよね。即答ってわざわざ付いてるのがいいです。
青山先生は読者の反応でどこがくっつくか決めるのではなく、あらかじめ先生の中で決めているのがいいんですよ。もう最初から矢印の先が分かっているから、読者もよりストレスなく安心して楽しめるというか。やっぱり、先生の中で固まっている、それがブレないというのが大きんだと思います。
名探偵コナンは殺人ラブコメですから、むしろそのカップルのやりとりを読者は楽しみにしてますもん。ラブコメがなかったら名探偵コナンじゃありませんから。
ラブコメへの読者の感覚の違いという点では、雑誌の違いも大きいのかもしれませんね。
休みになると不安になるというお話はお二人が大共感されていて、漫画家さんの宿命なのかもしれないな...と思いました。
読者としては、体調を崩して入院しているんだから仕事させずに休ませろ!っておもっちゃうんですけど、まさかご本人が描きたがっていたなんて。
ゆっくり描けるからむしろ楽しいだなんて、もう職業病ですよ😂
正直、編集者は先生を休ませるのも仕事だと思うのですが...とにかくお体に気を付けて、健康でいてほしいです。
そして、入院をきっかけにコナンの最終回のネームはすでに描いたという有名な話も。
いつ死ぬかわからないから描いておこう、というその心意気がすごいです。やっぱり完結させられないというのは、読めない読者よりも、描き切れない先生が一番悔しいのかもしれないですね。
展開次第で変わるかもしれないとのこと、今の段階ではどうなっているのかもう気になって仕方ないです。
最終回なので、もう黒ずくめとは決着がついていて、その後みたいな形なのでしょうか?
トロピカルランドで待つ蘭の元へ完全に元に戻った新一の姿で会いに行く、みたいな展開だったら嬉しいなぁ。妄想がいくらでも膨らみますね。
もし本当に「せーの」でONE PIECEと一緒に終わったら面白いですけど、きっとコナンの方が終われないんだろうなぁ...(サンデーという意味でも映画という意味でも終わらせてくれそうにない...)
昔は終わってほしくないと思っていましたけど、今となっては先生が元気なうちに、声優さんが健康なうちに、私が生きているうちにきちんと完結してくれたらと願っています。
今後の、RUMの両眼があったころの話を描かないととのこと、いや面白すぎません!?
衝撃のあまり声出そうになりました。務武さんも関わってくるということは、RUMの片目を失わせたのは務武さんだったり...?だから赤井さんはシルバーブレットと呼ばれているのか...?
「多分」じゃなくて確実に面白いので早く読ませてください(切実)。
最後に
もちろん共通点も多かったのですが、全体を通してなんだか尾田先生と青山先生の違いが見えてきて、本当に貴重な対談なんだなぁとしみじみしましたね。
この違いこそ面白いというか。
メラメラな尾田先生に対しほわんと穏やかな青山先生という構図がとても良かったです。
そしてやっぱり、私は青山先生のお人柄が好きだなぁと再確認しました。もちろん、尾田先生の魅力にも気づくことができたのでよかったです。
そんなお二人ともが、ファンレターが嬉しいとのことで。私、実はまだファンレターも年賀状も出したことがないんですよね。逆に読んだり返事したりする負担になってしまうかなと...
青山先生の年賀状のお返事は、最近は印刷のようですが、前まで年賀状は質問にひとつひとつ回答を出してくれていましたし。
でも、エピソードについての感想は思わず読み返してニヤニヤしてしまうと聞いてしまえば、出したくなっちゃいますね。熱量がすごすぎて引かれないか若干心配ですが...
そうそう、対談とは離れますが、同じジャンプに掲載されていた「高校生家族」がなんと名探偵コナンの「外交官殺人事件」と「浪速の連続殺人事件」のパロディーでしたね!
きっと対談があったからだと思うので、とても嬉しい限りです。ジャンプファンの方は気づいてくださったのでしょうか?
安室さんを切ってしまうからセルフで書き直したサンジに微笑ましく思っていたら、尾田先生の部屋の壁に青山先生のコナンとサインにすご...となっておりました。
本当にものすごい対談をリアルタイムで読むことができて、本当にありがたいことだなと。感謝でしかありません。
お二人がお元気で、これからも楽しく漫画を描いてくださりますように!
では、お読みくださりありがとうございました!